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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

八の六

の人足が残った。

風はさらに強くなったようだし、水嵩も増すばかりで、中庭の広場に波がしらの白く砕けるのが見えた。清七はあるだけの麻繩と、蓆や藁繩を持出させ、大工や左官たちを呼び集めて、油部屋へいった。

「油絞りの小屋は頑丈だ」と胸まである水をわけてゆきながら清七は云った、「あれは風では倒れねえ、だが絞った油の壺が流される」

栄二は役所の建物にとりついた。そこでは同心や下役人たちが総がかりで、雨戸に桟を打ちつけたり、廊下柱を綱で止めたり、杉丸太で突支棒をしたり、また一方では建物のまわりに、水を逃がすための溝を掘ったりしていた。栄二は溝掘りに加わり、一人の持っていた鍬を「代ろう」と云って受取った。

「よう」とその男は鍬を渡して云った、「よう、ぶしゅうじゃねえか、やりゃあがったな」

それは赤鬼の松田権蔵であった。

「島ぬけ破牢とはうまいこと云やあがった」と松田は云った、「こぶの野郎とおめえのおかげだ、さもなきゃあ人死にが出たところだろう、ご褒美ものだぞ」

「おいらのは威しじゃあねえ」と鍬を使いながら栄二が云い返した、「本当にそう思ったから云ったまでだ」

「本当にそう思ったって」