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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
「やっぱり気がつきなすったか」と与平が栄二の問いに答えて云った、「――慥かにここにはそういう気分がありますよ、ええ、これはね、そもそもこの寄場というものを作った、長谷川平蔵という人の考えだそうでしてね、寄場は牢ではない、人足を罪人扱いしてはならない、というのが代々の役所のきまりなんだということです」
「それがずっと今日まで続いたのかな」
「中にはひどい役人もいたそうです、お奉行さまから同心下役まで入れると、三十四、五人もの人数ですからな、ええ」と与平は悲しげに首を振った、「――ここには公儀から年に米六百俵、金が四百両あまり下されるんです、その米や金をくすねたり、人足の稼いだ賃銀のうわまえをはねたりした役人がいくたりかいた、ということを聞きましたな、そんなことがわからずにいたためしはないんだが、みつかるまではやめられないんでしょう、どこにでもあることだが、人間が欲に負けるというのはつくづく悲しいもんだと思いますよ」
栄二は聞いたことの仔細を理解しようとするように、じっと息をひそめていた。
「その、――」と栄二はきいた、「お上からそんな金や米が来るというのは本当ですか」