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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

十二の二

――与平はもう仕事に出はじめたので、食事の支度と洗濯のほかの世話は、もう栄二のほうで断わっていた。だが義一にはそれだけでも癇に障るとみえ、来てから、五、六日すると、おれにもめしを運べと云いだした。

「ちんばだからって寄場人足に変りはねえだろう」ちんばという言葉にちからを入れて義一は云った、「一人にできることならおれにもできる筈だ、それともおれにはいやだとでもいうのか」

「やりましょう」と与平は答えた。

「そうだろう、それがなかまづきあいってもんだ」と義一は云った、「ついでにこれからは洗濯のほうも頼むぜ」

十二の二

「怒っちゃいけないよ、怒らないでな」と与平はそっと栄二に囁いた、「めしの支度と洗濯ぐらい、なんでもありゃあしないんだから、あの男は云いがかりをつけるために、わざと難題を吹っかけてるんだからね」

「ああ」と栄二は頷いた、「怒りゃあしないよ」

おれがいるために、また厄介なことを背負いこませた、済まないな、と栄二は心の中であやまった。

役所で伯翁が習字を教え始めて以来、ここからも五、六人の者がかよいだし、話に聞くと、他の部屋の者たちも習いに来て、いちじは二十人を越すほどだったという。