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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

そこのところだけでも、栄二には腑におちないものがあるように感じられた。

「むずかしいよ、その話は」と栄二は腋にかった杖のぐあいを直しながら云った、「――しゃばでまえにそうだったからといって、こんども同じだとはきまっちゃあいないだろう、油部屋ではずっとなかまを押えてたことだし、案外うまくいくんじゃないかと思う、けれども、こんなことはよけいなおせっかいかもしれないが、肝心なのはおとよっていう人の気持だと思うな」

「おらもそれは考えた、それでよくよくおとよの心持をきいてみたんだ」清七は力をこめて云った、「あいつは泣きどおしに泣いて、あやまったり誓ったりした、これからはおら一人を守って、きっといいかみさんになるからってよ、涙で顔をぐしゃぐしゃにしてた」

そんなにまで清七と夫婦になりたいというのか、本心からそう望んでいるのか、それともまた清七と夫婦になることで、なにか面倒なことかられるつもりではないのか。栄二にはそこが、どうしても納得できなかった。

「薄情なようだが、この話はおれなんぞにゃあむりだ」と栄二は詫びるように云った、「――どうだろう、役所の岡安さんなら、いい知恵をかしてくれるんじゃないかと思うが」