轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
「なぜそれを渡さなかったんだ」暗い堀端を小舟町のほうへ歩きながら栄二が云った、「のぶ公はその包みを見ていたぜ」
さぶは堀の角で急に立停った。
「おら、酔っちまったらしい」さぶはちょっとよろよろしたが、そこへしゃがみこんでしまった、「――今夜は栄ちゃんに話があったんだよ」
「こんな堀っ端でどうするんだ、風邪をひいちまうぜ」
「和助あにいは店を持った」とさぶは口ごもりながら云った、「栄ちゃんもそのうちに店を持つだろう、けれどもおれはだめだ」
「そんな話は帰ってからにしろよ」
「おら、思うんだが」さぶの声はみじめに弱よわしかった、「どうせゆく先に望みがねえんなら、いっそいまのうちに、職を変えるほうがいいんじゃねえだろうか」
「ばかなことを云うな、おめえほど糊の仕込み上手な者はほかにいやあしねえ、親方がいつもそう云ってるのは自分でも聞いて知ってるじゃねえか」
さぶはちょっと黙っていてから云った、「――栄ちゃんはいつか、糊の仕込みで日本一になれば、それで立派な職人だと云ってくれた、そのとおりだろう、その場かぎりの慰めじゃあねえだろうが、糊作りだけじゃあ自分の店は持てやしねえ、よくいって一生涯、芳古堂の飼いごろしじゃあねえか」