轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
さぶは息をのみ、寝返って栄二を見た。
「忘れるって」とさぶがきいた、「栄ちゃんにも、誰かいるのか」
「話さなかったか」
「覚えがねえようだな」
「ずいぶんまえっからなんだ」栄二は夜具の中で胸を撫でた、「――本町の両替屋で、綿文ていうとくいのあるのを知ってるだろう」
「ああ、おれも一度いったことがある」
「あそこの中働きでおすえっていう娘がいる」と栄二は囁き声で云った、「色の黒い、ちっちゃな躯つきで、おれのことを大きくなったわね、って云やあがった」
「話の途中だが」とさぶが云った、「――綿文じゃあ栄ちゃんに、娘さんの一人を嫁にくれるってことになってるんじゃねえのか」
「ばか云え」栄二はそう云ってから、ふいとさぶのほうへ振り向いた、「――なんだって、おめえいまなんて云った」
「多市あにいが話してるのを聞いたんだ」さぶは気まずそうに口ごもった、「おらなんにも知らねえけど、綿文では娘の一人を栄ちゃんに」
「よせやい」栄二は枕の上で首を振った、「あんなおちゃっぴいをどうするもんか、それにこっちは半人めえの職人だし向うは大金持の娘だ、冗談じゃあねえ、そんな者を貰ったらそれこそ一生のお荷物だぜ」