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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

と栄二は云った、「小僧のじぶんからあにいたちの供でいって、お店の人たちみんなの気ごころを知っているし、みなさんにもあっしの気ごころはわかっている筈です」

彼は口ごもった。云いたいことは幾らでもある、それらは喉までこみあげているが、彼は自分を制止し、けんめいに感情を抑えた。

「昨日まではなんのこともなかった、仕事も自分ではうまくいってたと思います」栄二は低い声に力をこめて続けた、「――あにいも知っているあの、客座敷二つの襖の張替えですから、それほどむずかしいものでもなし、特にわざのいる仕事もありません、それでも初めての出仕事だから念に念を入れてやったんです、ところが今朝になって急に、もうおめえはいかなくともいい、って親方から仕事を外されちまいました」

「まあ茶でも飲めよ」と和助が云った。

「あっしは向う面をはたかれたような気持だった」と栄二は構わずに続けた、「それはどういうわけか、どんなしくじりがあったのかって、あっしは親方にいっしょけんめいにきいた、親方は答えちゃあくれなかった、いいから今年いっぱい休めって、おれの云わねえことはきくなって、それっきりなんです」