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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
と旦那は仰しゃったそうだ、それともおめえには思い当る者があるか」
栄二は首を振り、それから首が折れたようにうなだれた。
「おらあおめえのしたことたあ思えねえ」と和助は云った、「けれども条件があんまり揃いすぎていて、いますぐにはどうしようもねえと思う、おめえじゃあねえという、証拠もねえんだからな」
「おまけに銭箱のこともあるしですか」
「やけな口をきくもんじゃねえ」きびしい調子で云ってから、和助は声をやわらげた、「にんげん生きているうちは、知らねえまに世間へ借りや貸しのできるもんだ、おめえもいま世間に貸しを一つ作ったというつもりで、ここはなんにも云わず、暫くうちの仕事を手伝っていてくれ」
栄二はぼんやりと呟いた、「――世間よりも親のほうが恐ろしいって」
和助は訝しそうに栄二を見た。
「あにい」と栄二は眼をあげて云った、「あっしの荷物がここへ届くって云いましたね」
「今日のうちには届くだろう」
「済まねえが、金を少し貸しておくんなさい、小舟町には二十両とちょっと預けてあるんです、いや」栄二は和助に反対する隙を与えずに云った、「なんにも云わねえで、いまはなにも云わねえで貸しておくんなさい、頼みます、お願いします」