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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
四の五
四の五
さぶはうまく云いつくろおうとしてけんめいになった。だが言葉にあやをつけたり、含みのある表現をしたりすることは、彼にはまったく不可能であった。親方の芳兵衛はすぐに綿文へ詫びにゆき、栄二は店内から放逐すると約束した。それから浅草の和助を呼んで、東仲町の店にも置くな、と命じたということがわかった。
「そうだろう、そんなこったろうと覚悟はしていたんだ」
「浅草の和助あにいはいろいろとりなしたんだ」とさぶは自分の失策のように、口ごもりながら云った、「――いまそこまで仕置をするのは酷だ、当人のためも少しは考えてやらなければって」
「もうよせ」と栄二は首を振り、自分の膳の上にある汁椀の蓋を取った、「そうはっきりきまれば云うこたあねえ、おれも飲もう」
栄ちゃん、とさぶが呼びかけ、おすえは待っていたように酌をした。
「親方はまっすぐな人だ」栄二は注がれた酒をみつめて云った、「自分も人からうしろ指を差されるようなことはしねえ代りに、子飼いの人間でも曲ったことは決して許さねえ、だからこそ、芳古堂の屋台骨にゆるぎがねえんだろう、結構だ、立派なもんだよ」
栄二はそこで酒をひと息に呷った。