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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

梃子でも動くものかと肚をきめたが、若い者二人は静かに左右へ寄って来、温和しくしろよと云いながら、栄二の腕を二人で掴んで引っ立てた。振り放そうとしたが二人の力にはかなわず、そのまま玄関までひきずられていった。麻袋を打っていた小僧はびっくりしてとびのき、栄二はかっとのぼせた。

「このうちでは人をこんなふうに扱うのか」と栄二は叫んだ、「無実の人間にぬすっとの汚名をきせただけではたりず、ゆすりかたりのように扱うのか」

「この野郎」と云って若い者の一人が栄二の横顔を殴った、「黙らねえか」

他の一人も殴り、栄二を土間へ引きおろすと、足を払って倒し、自分たちもはだしのまま、米俵でも引いてゆくように、格子から石だたみ、そして門の外までひきずり出した。小雨はいつのまにか雪になって、凍てて濡れた道の上は、もうかなり白くなっている。その道の上へ栄二を放り出すと、二人の若い者は代る代る馬乗りになって、頭と顔をところ嫌わず殴りつけた。栄二は初めに殴られたのが耳に当り、それっきり右の耳が聞えなくなっていたし、裂けた唇から血が流れ、それに鼻血も混じって顔は赤い泥にまみれていた。

「ちくしょうちくしょう」