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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

「今日のご仁情は、かならず長く記憶しておく。いつか再会の日もあろう。関羽なり、わが主君なりの落着きを聞かれたら、ぜひ訪ねて参られよ」

車は、ふたたび旅路へ上った。

道は遠く、秋の日は短い。

三日目の夕方、車につき添うた一行は、疎林の中をすすんでいた。

片々と落葉の舞う彼方に、一すじの炊煙がたちのぼっている。隠士の住居でもあるらしい。

訪うて宿をからんためであった。関羽が訪うと、ひとりの老翁が、草堂の門へ出てきてたずねた。

「あんたは、何処の誰じゃ」

「劉玄徳の義弟、関羽というものですが」

「えっ……関羽どのじゃと。あの顔良や文醜を討ったるお人か」

「そうです」

老翁は、かぎりなく驚いている。そして重ねて、

「あのお車は」と、たずねた。

関羽はありのまま正直に告げた。老翁はますます驚き、そして敬い請じて門のうちに迎えた。

二夫人は車を降りた。翁は、娘や孫娘をよんで、夫人の世話をさせた。

「たいへんな貴賓じゃ」

翁は清服に着かえて、改めて二夫人のいる一室へあいさつに出た。

関羽は、二夫人のかたわらに、叉手したまま侍立していた。

老翁は、いぶかって、

「将軍と、玄徳様とは、義兄弟のあいだがら、二夫人は嫂にあたるわけでしょう。