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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
吟嘯浪士
……時に、昨日先生の仰せられた臥龍鳳雛とは一体どこの誰のことですか」
「いや、好々」
玄徳は、やにわに彼の脚下へひざまずいて、再拝しながら、
「玄徳、不才ではありますが、望むらくは、先生を請じ、新野へ伴い参らせて、共に、漢室を興し、万民を扶け、今日の禍乱を鎮めんと存じますが……」
云いもあえず、司馬徽はからからと笑って、
「愚叟は山野の閑人に過ぎん。わしに十倍百倍もするような人物が、いまに必ず将軍を、お扶けするじゃろう。いや、そういう人物をばせいぜい尋ねられたがよい」
「では、天下の臥龍を?」
「好々」
「それとも鳳雛をですか?」
「好々」
玄徳は必死になって、その人の名と所在を訊きただそうとしたが、そのとき童子が馳けこんできて、
「数百人の兵をつれた大将が、家の外を取り囲みましたよ!」と、大声して告げた。
玄徳が出てみるとそれは趙雲の一隊だった。ようやく、主君玄徳の行方を知って、これへ迎えにきたものであった。
吟嘯浪士
一
主従は相見て、狂喜し合った。
「おう、趙雲ではないか。どうして、わしがここにいるのが分った」
「ご無事なお姿を拝して、ほっと致しました。この村まで来ると、昨夜、見馴れぬ高官が、童子に誘われて、水鏡先生のお宅へ入ったと百姓から聞きましたので、さてはと、まっしぐらにお迎えにきたわけです」