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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

六

その者に将軍からよく礼をいうてたもれ」

六

車を護っている従者たちも、口々に廖化の善心を賞めて関羽に告げた。

「仲間の杜遠が、二夫人を分けてお互いの妻にしようじゃないかというのを、廖化は断然こばんで、杜遠を刺し殺したのでした。どうしてあんな正義心の強い男が、山賊などしているのでしょうか」

関羽は、あらためて廖化の前にすすみ、

「二夫人のご無事はまったく貴公の仁助である」と深く謝した。

廖化は、謙遜して、

「当り前なことをしたのに、あまりなご過賞は、不当にあたります。ただ願うらくは、私もいつまで緑林の徒と呼ばれていたくありません。これを機に、御車の供をお命じくだされば、幸いここに百十余の歩卒もおりますから、守護のお役にも立つかと思われますが」と、あわせて希望をのべた。

しかし、関羽は、その好意だけをうけて、扈従の願いは許さなかった。かりそめにも山賊を供に加えて歩いたと聞えては、故主玄徳の名にもかかわるという潔癖からである。

廖化はまた、せめて路用のたしにもと、金帛を献じたが、それも強って断ったけれど、その志には深く感じて、関羽は別るるに際して、この緑林の義人へこう約した。