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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
古城窟
一
裴元紹は、答えて、
「ここから二十里ほど先の臥牛山(河南省・開封附近)に、関西の周倉という人物が棲んでいます。板肋髯、左右の手によく千斤をあぐ――という豪傑ですが、この者が、将軍をお慕いしていることは、ひと通りではありません」
「いかなる素姓の人か」
「もと黄巾の張宝に従っていましたが、いまは山林にかくれて、ただ将軍の威名を慕い、いつかは拝姿の日もあろうにと、常々、その周倉からてまえもお噂を聞かされていたのです」
「山林のなかにも、そんな人物がおるか。そちも周倉に昵懇なれば、邪を抑え、正をふるい、明らかな人道を大歩して生きたらどうだ」
裴元紹は、つつしんで、改心をちかった。そして山中の道案内をつとめて、およそ十数里すすむと、かなたの地上、黒々と坐して拝跪している一団の人間がある。
近づいてみると、中にも一人の大将は、路傍にうずくまって、関羽、孫乾、車のわだちへ、拝礼を施していた。
裴元紹は、馬をとどめて、
「羽将軍、そこにお迎えしておるのが、関西の周倉です。どうかお声をかけてあげて下さい」
と、彼の注意を求めた。
古城窟
一
何思ったか、関羽は馬を下り、つかつかと周倉のそばへ寄った。