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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

二

、第3水準1-88-11)を世継ぎに立てたいため、なんとかして、私を殺そうとしています。一体、どうしたらこの難をのがれることができましょうか」

「ただよく孝養をおつくしなさい。いかにご継母であろうと、あなたの至孝が通じれば、自然禍いは去りましょう」

あくる日、が荊州へ帰る折、玄徳は駒をならべて、城外まで送って行った。※(「王+奇」、第3水準1-88-6)は、荊州へ帰るのを、いかにも楽しまない容子であった。それを玄徳がやさしく慰めれば慰めるほど、涙ぐんでばかりいた。

※(「王+奇」、第3水準1-88-6)を送って、その帰り途、玄徳が城中へ入ろうとして、町の辻まで来ると布の衣に、一剣を横たえ頭に葛の頭巾をいただいた一人の浪士が白昼、高らかに何か吟じながら歩いてきた。

二

ふと、駒をとめて、市の騒音の中に、玄徳は耳を澄ましていた。孤剣葛巾の浪士は、飄々乎として辻を曲がってこなたへ歩いてくる。

その歌うのを聞けば、――

天地反覆火セント欲ス

大廈崩レントシ一木扶ケガタシ

四海ニ賢アリ明主ニ投ゼントス

聖主ハ賢ヲ捜ルモ却ッテ吾ヲ知ラズ

「……はてな?」

玄徳は何か自分の身を歌われているような気がした。