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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
四
張飛は、よけい赫怒して、
「さては、汝ら一つになって、われらを生捕らんものと、曹操の命をおびて来たものだろう。よしその分ならば」と、いきり立つを、関羽はあくまでなだめて、
「おぬしを生捕るためならば、もっと兵馬を引き具して来ねばなるまい。見よ、それがしの従えている士卒は、二夫人の御車を推す人数しかおらんではないか。何という邪推ぶかさよ。ははは」
と、笑ったが、時も時、後方から一彪の軍馬が、地を捲いてこれへ襲せてきた。さてはとばかり張飛はいよいよ疑って、本格的に身構えをあらためた。
四
身構える張飛のまえをひらと避けて、関羽は赤兎馬の背から振向いた。
「――あれ見ろ、張飛。いま此方があれへ来る追手の大軍を蹴ちらして、おぬしに詐りなき証拠を見せてやるから」
「さては。彼方へ寄せてきたのは曹操の部下だな、貴様と諜しあわせて、この張飛を討ちとらんためだろう」
「まだ疑っているか。その疑いは、眼のまえで晴らしてみせる。しばらくそこで待っておれ」
「よしっ、しからば、見物してやろう。だが、俺の部下が三通の鼓を打つあいだに、追手の大将の首をこれへ持ってこないときは、俺はただちに、俺の意志によって行動するからそう思え」