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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

邯鄲

一

「…………」

終始、耳を傾けて、曹操は黙然と聞いていたが、

「辛毘。なんでもっと早く君と会う機会がなかったか恨みに思う。君の善言、みな我意にあたる。即時、袁譚に援助し、※(「業+おおざと」、第3水準1-92-83)城へ進むであろう」

「もし、丞相が冀北全土を治められたら、それだけでも天下は震動しましょう」

「いや曹操は何も、袁譚の領土まで奪り上げようとはいわんよ」

「ご遠慮には及びますまい。天があなたに授けるものなら」

「むむ、間違えば予の生命を人手に委してしまうかもしれぬ大きな賭け事だからな。遠慮は愚かであろう、すべては行く先の運次第だ。誰か知らん乾坤の意を」

その夜は、諸大将も加えて盛んなる杯をあげ、翌日は陣地を払って、大軍ことごとく冀州へと方向を転じていた。

邯鄲

一

冬十月の風とともに、

「曹操来る。曹軍来る」の声は、西平のほうから枯野を掃いて聞えてきた。

袁尚は愕いて、にわかに平原の囲みをとき、木の葉の如く※(「業+おおざと」、第3水準1-92-83)城へ退却しだした。

袁譚は城を出て、その後備えを追撃した。そして殿軍の大将呂曠と呂翔のふたりをなだめて、味方に手懐け、降人として、曹操の見参にいれた。