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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

「荊州は、大きな都だよ。おまえたちの見たこともない物がたくさんにある。叔父さまは荊州の劉表さまとお友だちで、ぜひ来てくれとお招きをうけて今度行くんだから、都の中に、お城のようなお住居を持つんだよ。おまえ達も、大勢の家来から、若さまといわれるのだから、品行をよくしなければいけませんよ」

叔母や叔父の身寄りから、そんな前ぶれを聞かされて、少年孔明の胸はどんなにおどったことだろう。

そして、荊州の文化に、如何に眼をみはったことか。

ところが、居ることわずか一年足らずで、叔父の玄はまた、劉表の命で、

「予章を治めてくれ。いままでやっておった周術が病死したから」

と、その後任に、転任をいい渡された。

こんどは、太守の格である。栄転にはちがいないが、任地の南昌へ行ってみると、ずっと文化は低いし、土地には、新任の太守に服さない勢力が交錯しているし――もっと困った問題は、

「彼は、漢の朝廷から任命された太守ではないんだ。われわれはそういう朦朧地方官に服する理由をもたない」と、弾劾する声の日にまして高くなってきたことである。事実、中央からは、漢朝の辞令をおびた朱皓というものが、公然任地へ向ってきたが、もう先に、べつな太守がきて坐っているため、城内へ入ることができなかった。