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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

三

玄徳はかさねて云った。

「それに近頃また、関羽も許都を脱出して、諸所をさまようておるやに伝えられております、私をして、荊州へおつかわし下さるならかならず関羽にも会い、お味方に伴れもどりましょう」

「なに関羽を」

袁紹は急に面をあらためて、

「彼は、顔良、文醜を討った讐ではないか。わしにその関羽を献じて、首を刎ねよと申すのか」

「いえいえ、そんなわけではありません。顔良、文醜のごときは、たとえば二匹の鹿です。二つの鹿を失っても、一匹の虎をお手に入れれば、償うて余りあるではございませんか」

「あははは、いや今のは、いささか戯れをいうてみたまでのこと。わしも実は深く関羽を愛しておる。真実、其許が荊州に赴いて劉表を説き、併せて関羽を連れてくるなら、何でわしが不同意をいおう。すぐ出発してくれい」

「承知しました。……が、大策は前に洩れると行えません。私が荊州に行き着くまでは、お味方に極めてご内分になしおかれますように」

玄徳はそういって、一夜に身支度をととのえ、翌日ひそかに袁紹の書簡をうけ、風の如く関外へ走り去った。

そのあとで、すぐ簡雍は袁紹の前へ出た。そして袁紹を不安に陥れた。