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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
「于吉さまじゃ」
「道士様のお通りじゃ」
道をひらいて、人々は伏し拝んだ。香を焚いて、土下座する群衆の中には、百姓町人の男女老幼ばかりでなく、今あわてて宴を立って行った大将のすがたも交じっていた。
「なんだ、あのうす汚い老爺は!」
孫策は不快ないろを満面にみなぎらして、人をまどわす妖邪の道士、すぐ搦め捕ってこいと、甚だしい怒りようで、武士たちに下知した。
ところが、その武士たちまで、口を揃えて彼を諫めた。
「かの道士は、東国に住んでいますが、時々、この地方に参っては、城外の道院にこもり、夜は暁にいたるまで端坐してうごかず、昼は香を焚いて、道を講じ、符水を施して、諸人の万病を救い、その霊顕によって癒らない者はありません。そのため、道士にたいする信仰はたいへんなもので、生ける神仙とみな崇めていますから、めったに召捕ったりしたら、諸民は号泣して国主をお怨みしないとも限りませぬ」
「ばかを申せっ。貴様たちまで、あんな乞食老爺にたばかられているのかっ。否やを申すと、汝らから先に獄へ下すぞ」
孫策の大喝にあって、彼らはやむなく、道士を縛って、楼台へ引っ立ててきた。
「狂夫っ、なぜ、わが良民を、邪道にまどわすかっ」