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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
県役署からは、べつな役人が来て、それらの群集をとりしずめていた。そして手錠の雷横は、大勢の前で、知事の戒告文を読み聞かせられ、木戸口に立っている幟旗の竿の下に曝し物としてすぐ縛しつけられてしまった。その懲罰の文にいわく。
県ノ与力、雷横
身、治安ノ警吏ニテ有リナガラ
大酒乱酔ヲ恣ニシ
劇場ヲ騒ガセ、人ヲ傷ツケ
公安ヲ紊スノミカ
官ノ民望ヲ墜スコト甚シ
依而
十二刻ノ「立チ曝シ」ニ処シ
是ヲ、諸民ノ指弾ニ委ス
城県知事
立て札の文字が雷横を射すくめている。雷横は恥かしかった。文の通りであったと思う。――だがゆうべのことは半分以上覚えがない。――覚えているのは太夫元白玉喬に人中で侮辱された刹那の憤怒だけである。
だが、あれがいけない。性来の自分の悪い酒癖だ。母にも禁酒を誓っていたのに。……要するに不孝の罰か。あまんじて十二刻の恥を民衆の前にうけよう。身の薬だ。と彼は観念の目をふさいで幟竿を背負っていた。
ところが本来なら、群集の弥次馬心理や日ごろの反官意識が当然、彼への唾ともなり悪罵や石つぶてになるべきなのに、
「おや、雷横の旦那が?」
「どうしてまた?」
と、気のどくそうに、目をそらす者はあっても、いい気味だと嘲るような副作用はほとんど見られなかった。