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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
……可惜、あなたほどな人物を、七年もこの地の牢城長官の小使みたいに朽ちさせておくのは勿体ないし、また将来とても、とうてい、官界の堕落腐敗のなかに長く晏如としていられるあなたでもないことは知れきっていると思ったからだが……」
と、さすが才略の弁に富む呉用もいまはあきらめ顔して。
「ま。……お話もこれまでとしたら、ひとつ、ぶらぶらその辺まで、ご一しょに歩きましょうか」
と、連れ立った。
そして蓮花の池畔から前の石橋の上までかかると、朱同はアッと顔色を変えた。どこへ行ったのか、主人の子が見えないのである。
彼はウロウロした。気のどくなほどうろたえて探し廻る。それを呉用は他人事に見ながら言った。
「いや朱同さん。探してもムダだろう。じつはもう一人、てまえが供人を連れていたから、その供の男が、気をきかして、どこかへ遊びに連れて行ったものとみえる」
「冗談じゃあない!」と、朱同はなぐさめられているどころか、憤然として。「大事な大事な長官の乙子(末子)さまだ。いったいどこへ連れて行ったんだ、人の気も知らないで」
「ま、お怒りあるな。ご一しょに探しましょうわい」
それから附近を尋ね廻ったが、影も形も見当らない。