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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

と、なぐさめた。

すると、祭壇の間の端で、これを聞いていた李逵が、場所柄もわすれて、ヘラヘラと笑い出した。

「そんな手間暇は無駄事ときまッてらあ、訴えの筋が通ったり、ちゃんと、掟が立つようなお上なら、天下に謀反のおきる道理はねえ!」

親族たちは変な顔して、みんな李逵の方を振り向いた。柴進もその人たちの手前、勢い叱らざるを得なかった。

「これッ李逵。駄弁を弄すな。きさまこそ、供部屋へ退がって、ほかの供人のように神妙にしていろっ。どうも仕方のない黒面猿だ」

その日は折も折だった。柴家では故人皇城の七々忌に当たり、典儀のあと、型のごとく、法事の宴に移っていた。――と、そこへ、どやどやと一群の“招かれざる客”が門へおしかけて来たものだった。

「当主の病死はわかっておる。だが、誰か口のきける奴は残っているだろう。あいさつに出せ」

と、中の一人が門内でわめいている。

見れば、従者、取巻き、無頼漢、およそ三十人余り、城外へ遊山にでも出た帰りか。半弓、吹矢、笛太鼓、蹴、酒瓢などを持ちかざし、おそろしく派手に飾った化粧馬の鞍上には、例の兼軍奉行の義弟、殷直閣がニタニタと乗っていた。