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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「これは、これは」
と、やがてその前へ家の内から柴進が会釈に出ていた。そしてあくまで下手に。
「何の御用か存じませぬが、あいにく今日、当家はかような取混み中。おかまいも出来ません。どうかまた他日でもお立ち寄りを」
「こら、こらッ。きさまは何者だ。雇人か、家職の者か」
「いえ、柴進と申す親族の一人で」
「では滄州の」
「はい」
「オオその柴進なら話はつけよい。皇城の病死、つづいて葬儀、やむなく今日まで待ってやったが、早や七々の忌も今日で相済もう。さっそく明日はここを明け渡せよ。よろしいな」
「ご冗談を」
「なにッ」
「こんりんざい、当館はお譲りできません。たってお望みなら、天子のご裁可をうけておいでなさい」
「大きなことをいうな、大きなことを」
「いや広言ではない。時代こそ降るが、わが柴家は天子の裔だ。しかも証拠の丹書鉄券も伝わっている」
「見せろッ、それを」
「いま、滄州へ人をやってとりよせている。奉行の威をかさにきて、余りな非道を押すならば、こちらにも考えがある」
「あはははは」と、直閣は馬上で大きく身を反らして笑いながら「こいつも死んだ皇城と同じことをいっておる! 虚構歴然だ! 明日まで猶予しておこうと思ったが、もはや仮借にはおよばん。