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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「よし、向きをかえて、ひとつ人混みを探してみよう」

翌日は、脚の咒符を解いて、薊州の城内を一日歩いた。また次の日も、寺院、祈祷所、道行く僧侶、少しでも由縁がありそうなと思えばやたらに訊ねあるいてみた。しかし、手がかりは皆目ない。

そして十一日目のことだった。城外のいぶせき飯屋でひるめしの白麺を二人してすすっていると、隣の床几でも一人の老人がお代りを急いでいた。折ふし客が混んでいたのでなかなかお代りの麺が来ない。出来て来たかと思うと隣の李逵が逸早く横から取って食ってしまう。それが八杯にもおよんだので、ついに老人も腹を立てた。

「なんじゃい、この人はまあ。わしが誂えたのを、そばからそばから、喰べてしまいくさる。馬か豚腹か」

「なに。豚腹だと。やいッ、いい加減にしろとはなんだ。外へ出ろ、この老いぼれめが」

「これっ、李逵。きさまが悪い」

「だって、院長。ものの言い方もあろうッてもンでさ」

「うんにゃ。大体、きさまがガツガツしすぎておる。ご老人、ゆるしてください」

「これはどうも、そう仰っしゃられると、年がいもないことで……。じつはこれからお山へのぼって、羅真人さまのご法話を伺いたいと思いましてな」