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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

あっしを空井戸の底へやっておくんなせえ」

「や、李逵か」

「こんどのことの発頭人はこの李逵だ」

「なお、その自責を忘れぬだけは賞讃にあたいする。しかし」

「しかしもくそもねえ。底へ行って見届けるのが一番早ええじゃありませんか」

「いやその方法だ。どうして八、九丈もある地底へ降りて行けるかの」

「まかしておくんなさい」

李逵はどこかへ飛んで行った。と思うと手下の兵に、大きな竹籠や麻縄をかつがせて再び林の奥へやって来た。――すでに牢番藺仁のみちびきで、呉用、宋江、そのほかも空井戸の口をめぐり合い、中を覗いて、その底知れぬ深さに暗澹と顔見合せている態だった。

「さ。退いた退いた!」

李逵は意気込んで言ったものである。

「やいやい。そこらの手頃の樹を伐り仆して来い。そして空井戸の上へ三叉を組め。それへ竹籠の麻縄をかけるんだ。……なに、籠をどうするのかッて。べら棒め、飾り物じゃあねえ。俺がその中へはいって井戸の底へ降りて行くんだ。黙って俺のさしず通りにしろい」

いうやいな、李逵は衣服をかなぐり捨て、顔より真っ黒な丸裸となって、はや竹籠の中にうずくまる。――それを見ると、みんなクスクス笑った。