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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

徽宗皇帝は、びっくりしたようなお顔だった。――今も今とて、宮中の宣和画院で、当代の帝室技芸員格の画家を集めて、天子ご自身も絵絹を展べ、美しい侍嬪に絵の具を溶かせ、それらの中でご自慢の絵筆に羞魂をうちこんでいたところなのである。――このたのしい平和に盈ちた地上のどこにそんなあぶないことが起っているのかと、むしろ不審にたえぬらしい、おん目をしばだたかせているのだった。

「たいへんだね、それは」

「まことに容易ならん異変にござりまする」

「高、どうしたらいい。思うところをいってみい」

「良き将軍に、勅をお降し賜わって」

「良き将軍には、誰がよいのかね」

「目下、汝寧におる呼延灼に如く者はございません。――彼は河東における開国ごろの名将呼延賛の末裔で、兵略に通じ、よく二本の赤銅の鞭をつかい、宇内の地理にもあかるく、梁山泊征討の任には、打ってつけな武人かとおもわれます」

「ではすぐ枢密院へ、朕の旨を申し、汝寧からその者を呼びよせい」

汝寧の地はかなり遠い。なれど俄な勅を拝した呼延灼は、ただちに任地から馳せ上り、着いた日、まず、高総理の衛門府に駒をつないだ。

「ようぞ早くに」