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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
と、お互い、なぐさめ合ってはいたものの、泊中をつつむ悲愁の気、宛子城の一帯をおおう敗色の深刻さ、それだけは、どうにもならない。
戦野へくり出した六千余の山兵のうち、帰りえた者は三分ノ一にも足らず、あまつさえ、頭目のなかの林冲、雷横、李逵、石秀、黄信らまでが、みな負傷して、かつぎこまれて来るという惨状なのだ。
「傷者はみな山へ上げて養生させろ」と、総統の晁蓋は、こんなときこそと、おちつきを示して、
「――宋先生も、おつかれでしょう。こんどはてまえが代って戦闘に当りますから、しばらくは聚議庁で、お休みになってはどうで?」
「とんでもない。敗軍は私の責任だ」
宋江は応じなかった。――事実またそうしてもいられない。次の日には、すでに水泊の対岸には、官軍の旗がいたる所に見え出し、そして埠頭茶屋の石勇、時遷、※大虫おばさんなども、みな敵に追われて逃げ渡ってくる始末。――まさに、ここ梁山泊も、芦荻一水をへだてるのみで、ぐるりと、彼方の岸は、官軍の猛威に包囲され終った形とはなってきた。
ここに。――この捷報は早くも開封東京の城の宮門へ飛脚されたので、天子徽宗は大いによろこばれ、高総理に聖旨をくだして、御感の状と、黄封の宮廷酒十瓶とを、征地の慰問に送らせた。