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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
今からでも追ッつける。野郎、足でも怪我をしたことか、後ろ姿を見たところ、跛行をひいていましたぜ」
「奥方っ。奥方っ」と徐寧は俄かに妻を呼んで――「いま隆さんから聞くと、かくかくの次第だ。すぐ旅仕度をそろえてくれ。隆さんも一しょに行ってくれるだろうな」
「行きますとも。男の人相は、ちゃんとこの眼におさめてある。さ……お急ぎなすって」
それよりは前のこと。一方では例の“梁上ノ君子”蚤の時遷。あの朝、首尾よく盗みとった一物をかついで、明けがた、早くも城外の草原を低い雁のごとく飛んでいた。
「おーいっ時遷、待った待った……」
「やあ、戴院長(神行太保ノ戴宗)じゃござんせんか」
「さっそく、荷をそこへ下ろせ。呉軍師が書いた狂言どおり、これから先の手順にも、きさまはまだ一ト役あるぞ」
「わかっております。どうか中身の鎧は院長がお持ちなすって」
と蓋を開けて、中の薄羽小札重ねのよろいだけは、戴宗にここで預けた。――戴宗はそれを持って、独自の神行法で、すぐ梁山泊へと急いでしまい、時遷は空櫃だけをかついで、その日、かねて諜し合せていた街道茶店へ入って行った。
ここには、これも呉用の命で、湯隆が彼を待っていた。