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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

問われると劉老人は、もうさめざめと本当に泣き出していた。「……じつは」と打ち明けるのを聞いてみると、今夜は愛娘の婚礼の晩だという。

「なに、一人娘の婚礼だと?」

いよいよ、おかしい。好奇心も手つだって、なお仔細を聞きほじってみた。

そこで老翁が語り出すのを聞けば、この地方の青州の県軍でも手を焼いている匪賊の一団がこれから奥の桃花山に住んでいる。

愛娘の聟というのは、その賊将の弟分と称する周通という者で、もとよりこっちから、嫁るといったわけではない。

「桃の花が咲いたら、聟入りにいくぜ。前もって、山から使いを出しておくが、聟入りの夜には、花嫁を磨いて、酒肴の支度はいうまでもなく、万端、華やかにしておきねえ」

と、すでに周通の前ぶれを受けていたものだとある。そしてもし、それに逆らえば、桃花村は一夜に焼き払われるか、みなごろしの目に遭うであろうと顫くのだった。

「あはははは、いまどき、古手なやつもあるもんだ。よろしい。じゃあ真夜半に、その桃花山の賊が押しかけ聟に来るんだな。劉じいさん、心配するな」

「……と、仰っしゃってくだすっても」

「じつは、わが輩はもと渭水で提轄(憲兵)をしておった魯という者だ。