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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「だめです。ひとたび妄に晦んだお人には。――いかなる神占も耳には仇事。つまりは、それが運勢というものでな」
こういわれてみると、人間の弱さ、盧俊儀も何か密かな危惧を抱かずにいられなかった。わけて彼には、人間を観る目がある。その目で呉用を観れば、決してただの凡庸な売卜者ではない。よけい彼がこの手管にひッかかった理由はそこにあったといってよい。
「先生。もし卦面の告げがわたくしの運命だとしたら、何とか、その凶運を避ける術はないものでしょうか」
「ないことはありません。それが易だ。易とは、過去のことをあてて足れりとせず、未来の凶にそなえて、よく身を護るべきためにあるもの。それでなくては易学ではない」
「では、どうしたらよいでしょうか。おっしゃるような厄難を避けるには」
「真実、謙虚になって、おたずねか。……ならば申そう」
と、呉用は、巽(東南)の方を指さして。
「北京から一千里の外、巽にあたる地方へ一時身をかわしておしまいなさい。多少、驚くことにぶつかるが、自然、運が開け、明年以後は、無事なるを得ましょう」
と、いった。
彼はまた、謎めいた一詩を書いて盧に渡した。