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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

そして香羅の手を襟に巻き帯には伊達な挿し扇、の簪には、季節の花。

さらに、これを脱げば、雪白の肌に、目のさめるような美しい刺青ももっている。

生れながらの、北京ッ子だった。

幼少、両親を亡くし、盧の大旦那にひきとられて、わが子同様に愛育されてきた者だ。

かねにあかせた名人刺青師の仕事だけに、どこの刺青競べに出ても、ひけはとらない。笛、琴、胡弓、歌、踊り、天性すぐれざるなしでもある。――かつは一を知って十を知る悧発であるばかりでなく、四川弓と呼ぶ短弓を手挟み、わずか三本の矢を帯びて郊外に出れば、必ず百禽の獲物を夕景にはさげて帰るというのでも、その技の神技がわかろう。――ともかく相撲に出ても、遠乗りの騎にムチを打っても、北京の巷では花柳の妓までが、彼の姿を見れば、

浪子燕青 浪子燕青

と、まるで酔ったように謳い囃してやまないほどだった。――その瓊の面は、漆のひとみは、今、一同と共にじっと、盧の大旦那のくちもとを見まもっていた。

「おお、燕青も見えたな。……では、これからわしの意中を打ち明けるが、決して誰も止めないでくれよ」

と盧俊儀は、過日来の易の一条と、血光ノ災のこととを、語りだした。