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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「折入って、一同に相談がある。晩飯がすんだら、みんな奥の大広間へ集まってくれ」

と、いい渡した。

さて何だろう? ただ事ではない、と。宵のくちになると、大番頭の李固以下、盧家の雇人四十幾人、二列になって、大旦那の前に出て生唾呑んだ。

わけてこの李固は、十年前、凍えきって店の前に行き倒れていたのを、大旦那に拾われて、その実直をみとめられ、読み書きそろばんも達者なところから、いまでは一番番頭に起用されていた者なので、「お家の大事」には、まず誰よりも真剣になるのは当然だった。

「李固。みんな揃ったかい」

「へい。洩れなく、揃いましてございますが」

「ひとり、あれが見えんようだが」

「お。――燕青さんだけまだ見えていませんな。どうしたのか」といっているところへ、「オオ見えた」という人々の声を割って、

「どうもおそくなりました」

と、神妙にわびながら、李固の隣へ来て、直立した者がある。

小づくりで、肉むら白く、朱唇のどこかに愛嬌をたたえ、年ばえ二十四、五かと見える、生きのいい若者だった。白衫に銀紗模様という洒落た丸襟の上着に、紅絞りの腰当をあて、うしろ髪には獅子頭の金具止め、黄皮の靴。