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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
そして燕青がなおも何か後ろで叫ぶ声に耳をふさいで、あたふたと北京府でも目抜きな街中の大構え、質屋と物産交易を兼ねた老舗看板の金箔も古いわが家の宵の大戸をドンドン叩いた。
「俊儀だよ、いま帰ったぞ。開けないか。わしだよ、わしだよ!」
家の中では何かドタバタとあわただしい。変な気配である。大戸はいつまでも開かなかった。
が、やっと大番頭の李固が顔を出して来た。そして、さもさも、ようこそご無事で、とは迎え入れたものの、雇人一同もみな何か狐に憑ままれたような挨拶ぶり、奥に入れば、妻の賈氏は、見るなりすがったが、ただただ泣いて、良人のいない旅の留守の、余りな長さと淋しさを、口説に訴えてみせるばかり……。
「ま、お離し……。燕青はどうしたね。顔を見せないじゃないか」
「そのことでは、大旦那」と、李固はすぐ横から話を取って――「いずれ申しあげますが、あれにはいろいろ不始末などもございましてな。お帰り早々、いやなお話も如何でしょうか。ま……お久しぶりのご帰宅、さっそくお風呂にでもはいって、今夜はまあゆるゆる楽におやすみ遊ばしては」
妻の賈氏もいそいそすすめ、李固も何かともてなすので、盧は自分の小心を辱じ、その晩はわれから機嫌を直して寝に就いた。