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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
敵将、没羽箭の張清は、はや決死のかくごだったとみえる。たのみにしていた両翼の旺と丁得孫のふたりはすでにぎ捕られていた。――のみならず賊軍の数は倍加している。――きのうまでは何の異常もなかった後方にあって、万雷のとどろきがするのもみな、それは梁山泊軍の鼓噪ではないか。
だが、彼は決して、猛獣が度を失った如き者ではない。
ついには仆れるまでも、山東の兇賊ども、一人でも多く、あの世へ連れて行くぞ、としているようだった。
次の日である。いよいよ、彼の馳駆をゆるす戦線も圧縮されてきた。――宋江はたのしんでいた。「今日こそは、張清の阿修羅な姿を、近々、この目で見られようか」と。
はや黄昏れ近い。
張清は一河川の岸に追いつめられ、突如、河中の船からおどり上がった泊兵の水軍にどぎもを抜かれた。湿地を脱するだけでもやっとだった。しかし、奮然このときに最期のはらを決めたのだろう。あたりに残る部下の精鋭わずかと共に猛然たる勢いで、
「盧俊儀に見参ッ。呉用はどこに?」
と、泊軍の本陣を目ざし、そこの旗門へ真ッ向に突進して来た。
「むむ、なるほど、ただびとでない!」
宋江は見た。