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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

燕青は、李逵へ話した。

「癪じゃあねえか。泰州といえば、山東の鼻ッ先だ」

「むむ、そいつは生意気な野郎だなあ」

「だから宋先生と盧俊儀さまにお願いして、おゆるしを得、俺はこれから、その泰岳へ出かけて行くのさ。二十八日の奉納相撲で、天下無敵とかいってやがる任原の野郎を、数万人の見物の中で投げ飛ばしてやったら、さだめし胸がスーッとするだろうと思ってね」

「ちょ、ちょっと待ちなよ」

「なんだい」

「おめえは、浪子燕青とかいって、四川弓を持たせちゃ、巧いもんだそうだが、体ときては、山ではいちばん小ッけい方だ。先はいずれ仁王のような大男だろうに、自信はあるのかい」

「黒旋風、見損なッちゃいけないよ、これでも北京の春相撲、秋相撲には、一ぺんだって、負けたことはないんだぜ」

「よし。万一ッてえこともあらあ。おれが助太刀に行ってやろう」

「まっぴらだ。みんなも言ってたよ。李逵が顔を出すと、ろくなことは一度もないって」

「いや、こんどは俺も考えたさ。百日もお灸をすえられれば沢山だろう。連れて行けよ。なあ燕青。まったくこのところ、世間の匂いも嗅いでいなかったんだ」

すがられると、燕青はあわれにもなって、つい条件付きで、連れて行くことになった。