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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
すでにこの時、州長官の手勢と役人たちは、梁山泊の徒とあっては聞き捨てならず、全山の警邏を招集して、四方に配備を布いていた。ぐずぐずしていれば県道の城門を閉められる惧れもある。盧俊儀は李逵一人にかまってはいられないと思った。
「どうぞ、ご一同は先へ行ってください」――言い出したのは穆弘である。「どうせ、李逵のこと。何か道草を食ってるに違いない。てまえが探して連れ戻ります」
「たのむ」
と盧俊儀たちは、穆弘にあとをまかせて、一ト足先に梁山泊へ引き取った。
ところで一方の李逵は、例の、二本の斧を旅籠から受け取って両手にぶらさげ、いつか道を間違えて、寿張県の役所の前へ来てしまった。まるで方角ちがいへ来たのだから後から慕って来る捕手もない。それにちょうど午飯時か、役所の門を覗いてみると、ここはいたって、しんかんとしていた。
「ほ……。飯時か。道理でおれの腹も減っている」
のそりのそり、彼は中へ入って行った。
「ここは空家か。人間はいねえのか」
李逵は、両の手の二丁斧を卍形に持って、役所の玄関口に突っ立った。
出て来たのは受付の小吏らしい。一ト目見るや腰を抜かしかけた。