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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
こら、なぜ縄をかけん。庇う奴は同罪だぞ」
「あっ、ど、どうぞおゆるしを」
「だまれっ。おかみのご威光もおそれず、なんじは到る所で強盗を働いたろう。そもそも法律を何と心得るか。この生れ損いめが! 盗ッ人野郎、きさまのような奴を人間の屑というのだ……」
と、威猛高に卓を叩いて罵ッたが、
「いけねえ、どうも少し俺に縁がありゃあがる。放してやれ。泥棒ばかりが悪党じゃねえや。裁判は止めたよ。さあ退け退け」
蹌踉と彼はその身なりのまま往来へ出て行った。空腹へ入った昼酒がまわって、すこぶるいいご機嫌のていである。――役人や捕手は物蔭から首を出して見送っていたが、ゆらい梁山泊の近県では泊中の手なみを知っているしまた飢饉などの時には逆に助けられてさえいるので、官民ともに積極的な敵意は持たず、いわば触らぬ神にたたりなしとしていたのであった。
「おや、寺小屋だな。こいつはなつかしい」
童蒙村塾とある一家屋を見かけると、李逵はそこへも酔狂に入って行った。驚いたのは先生であり学童たちである。蜂の子みたいに騒ぎかけたが、
「しずまれ」
と、李逵は槐の笏で号令をかけながら教壇へ上った。