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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
他の服役者にくらべれば」
「そうよ。よっぽど恩にきなくては罰が当るぜ」
「その上にもですが、なんとか、お計らいをもって、首枷をおゆるし願われませぬかなあ」
「除ってくれというのか。ふふん、そりゃあ、だいぶ物費りになるがね」
「銀子なら、なおこれに所持する限りのものは、いといませんが」
「そうかい。もっとも、おめえのところには、まだ柴家からの差入れもあるだろうしな。むむ、まかしておきな」
差撥は、銀をうけとって戻ったが、やがてその夕きて、首枷をはずしてくれた。
冬は深まる。
大陸の氷地はかんかんに凍てきても、数万の服役者には一日の休みもない。ボロ布と垢と水洟と眼ヤニにまみれた骨ばかりの人々が、朝は暁天から蟻のごとくゾロゾロ出てゆき、夕には疲れた煙のように、どんよりと簇り戻ってきて、やがて眠る。
苦役場は三十里四方もあろうか。農耕、土木、鍛冶、木工、染色、皮革なめし、車輛作り、牧畜、酪農、機織など、その生産は、あらゆる部門にわたっている。だが、ここでの消費物資ではない。ほとんどが都へ輸送され、宋朝の贅と権門の奢りと、軍事面に費やされる。
が、林冲は、柴進のおかげで、苦役だけは舐めずにすんだ。