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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「はアて。これは弱った。……これじゃあ、飯も炊けねば、寝場所もない」
途方に暮れたとはこのことか。
「こうしていては、この身まで、雪の中に埋められてしまう。そうだ、今夜はさっきの古廟に寝て、夜が明けてからの思案としよう」
板屋根の一部をめくッて、心覚えのところから蒲団だけを引っ張り出し、それを担いで、村道の古廟まで返ってきた。
廟の中は案外広い。ひょいと見ると、金色の鎧甲をつけた恐ろしい武神像と、二匹の小鬼が祠ってある。また壇には、供物だの蝋燭の燃え残りだのたくさんな色紙などが散らばっていた。彼は、その前に夜具をのべて、
「やれ、一寸先はわからぬもの。妙なところで夜を明かすことになったもんだな。だがまあ、瓢箪に酒のあるのが何よりの倖せ」
さっそく焼肉の包みを解いて肴とし、瓢の口から冷や酒を仰飲っていた。
「ああ、いいあんばいに酔ってきた。これでぐッすりできれば」
ごろと、身を横ざまに、手枕となったが、やはりいけない。着ている白木綿の服や肌着を透して雪水がジミジミと沁みてくる。――のみならず、どこか遠くで、バチバチと妙な響きが、雪風にまじって聞えてくる。