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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
また林冲も、ひそかにこれはまずいと警戒しだしたが、ふと見ると、大焚火のそばには、村民たちが寒さしのぎに飲んでいた酒瓶が幾つも開けてある。それを見てはもう矢もたてもなかった。
「すみませんが、そいつを一杯、振舞ってくれませんか」
――しかし、誰も黙っている。うんともいわず、すんともいわない。
林冲は「えい、面倒な」と勝手にそこらの器を取って二、三杯飲んでいた。
ところが、その間に、古廟の方から走ってきた者が、後ろの方で、なにやらコソコソ耳打ちし合っていたのだった。やがて林冲のそばへ来て、
「おまえさん、よっぽど酒に渇えていなさるんだろう。さあ、こんなときだ、飲むさ。存分、飲んでいくがいいや」
と、こんどは頻りにすすめだした。
もうこの辺でと、酒の碗をおきかけていたが、つい林冲はまた手に取った。そしてたちまち半壺を飲みほし、さて、礼を言いながら起ちかけようとしたときである。向う側にいた一人の男が、ぱっと林冲の頭から投網をかぶせた。
「それっ獲ったぞ」
とたんに、彼の上へ、棍棒、鈎棒、鳶口、刺叉、あらゆる得物の乱打が降った。そして、猪の亡骸でも担ぐように、部落の内の籾干場へかつぎ入れ、