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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

この戦いは、見事だった。両者の威風といい、その技といい、見ているにさえ息づまった。――大斧の閃々、槍尖の電光、おめき合うことも幾十合か。馬も汗するばかりなのに、どうしても、勝敗はつかない。満場は声なく、巨大な落日の紅炎は、西の空へ、刻々に沈んでゆく。しかもまだ、相互ともに意気旺なのだった。まさに不死身の人間の戦いかとも怪しまれている。

「ああ。みごと」

梁中書は、いつか夢中で、その銀椅子から立っていた。彼は満足した。大名府に両雄を得たり、といってよろこんだ。

彼のそばから伝令が走った。引分けの銅鑼が鳴る。索超の部下は、万雷のような勝鬨をあげたが、楊志の方には、歓呼もない。

しかし二名は、台下に並んで、ともに、同等な賞を拝領した。そして夜は演武庁の楼上で、盛大な祝賀の宴に誉れを謳われ、その席上ではまた、

「以後、索超、楊志ともに、相並んで、軍の提轄使(憲兵の長)たるべし」

と、任命された。

何が不幸か幸か、げにも人の運命はわからない。これからというもの、楊志は、梁中書に気に入られ、楊志もまた、恩に感じて、心からその人に仕えていた。

いつか夏も近づいて、五月の声を聞くと、その日は、端午の節句だった。