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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

などと、牡丹をめぐる蝶のように、戯れかかった。

「ははは。そうかね。そんなに澄まして見えるかなあ」

九ノ宮の端王は、上品な苦笑のうちに、ほどよく群蝶の攻勢をあしらッておいでになる。だが、日頃の行状には、ずいぶん弱味がおありとみえて、彼女らの口封じには、ひと骨折られたご容子だった。それをまた、陪席の来賓はみな、おかしげに眺め合って、しばしば、楽堂の胡弓や笙の音も、耳に忘れるばかりな歓声だった。

誕生祝賀の日から、まもない後のことである。

「高。――この贈り物をたずさえて、九ノ宮の御所へ、ちょっとお伺いしてまいれ」

王大将のいいつけで、彼はその日、端王の御所へ、使者として向けられた。

もとより、高※(「にんべん+求」、第4水準2-1-50)は、何もかも、わきまえている。

過日の誕生祝いの折、端王が休息された書院で、ふとお目にとまった文房具がある。玉の龍刻の筆筒と、獅子の文鎮とであった。

「――そんなにお気に召したのなら、後日、お届けさせましょう」と、王大将がそのさい端王へお約束していたのを、高※(「にんべん+求」、第4水準2-1-50)は側で聞いていたのである。