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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

東宮御所は、梁城の一郭。つつしんで府門へさしかかると、衛兵が、

「いずれから?」

と、威厳もなかなか他とはちがう。

「王大将のお使いとして、九ノ宮へ奉るおん贈り物をたずさえてまいった者です」

と聞いて、衛兵はすぐ門をひらいてくれた。で、彼は悠々と内へ進んでいったが、さらに中門の侍郎へむかって、訪れを再びした。

中門の役人は、ていちょうに、

「それはご苦労でした。したが唯今、殿下には、おん鞠場へ出て、公卿輩を相手に、蹴まりに興じておられますゆえ、しばらく、その辺でお待ちくださらぬか」

と、いう。

「あ。鞠場でいらせられますか」

鞠とあっては、彼の特技、聞き捨てにならない。

高はつい、つばを呑むような顔して言った。

「蹴鞠は、それがしも、好む道でございますが、よそながらでも、御所のおん鞠場の景を、拝見できぬものでしょうか」

「おやすいこと。ならば、ご案内いたしましょう」

林苑を縫って行き、やがて、明るい広場へ出ると、はや快い鞠の音が耳につく。

いずれも鞠好きな、上流の貴紳や姫君や公達ばらに相違ない。広やかな鞠の坪をかこんで、ある一組は、榻や椅子に寄り、ある一群れは芝生に脚を伸ばしたりして、競技を観ているところであった。