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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ちイ。なんてえ土根性だろう」

楊志は、にがりきったが、しかし、この老執事にも、兵どもにも、さっきの自分の失言を、行く先の都へ着いてから、尾ヒレを付けて吹聴されたりなどしたら始末がわるい。かたがた、これ以上の遺恨を含まれるのも、あとの道中に良策でないとは考えられる。

それもあったし、また、さいぜんから眺めていたところでは、二た桶の焼酎にも、怪しまれる点はなかった。で、不承不承な面色だったが、

「……仕方がない。あんたまでが、そういうなら、今日かぎりのこととして、眼をつぶっていよう。その代り、渇を癒したら、元気よく、ここを出発するように」

「や。ご承知くだされたか。さぞ兵どもも、雀躍りすることでしょう。一同よろこべ。おゆるしがあったぞ、おゆるしが」

なんのことはない、老執事の謝自身が、雀躍りの態だった。兵と酒桶のあるところへ、舞い戻るなり、歓声を揚げていた。

「いやだ、いやだ。おめえらには、売りたくねえよ」

兵は歓声をわかしたが、酒売りはまた、ごねだした。

「こんな、おもしろくもねえ道草を食ってるよりは、村へ行って、祭りの衆に、よろこんでもらったほうが、よっぽど増しだ。