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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
……すぐ落ちのびねばなりませんな。また、それがその人の本望でもありましょう」
「といって、どこへ」
「ともあれ、石碣村まで走って、一時、阮ノ三兄弟の家へでも」
「先生、彼らは三人とも、漁師ですぜ。この人数で、どうして狭い漁師小屋などに」
「いやいや。そこは一時の足溜り。石碣村の浦から水を隔てた彼方には、いかなる所があるかを思い出してごらんなさい」
すると、公孫勝や劉唐も、異口同音につぶやいた。
「梁山泊。……江の彼方は梁山泊だ」
「そこだ!」と、呉用学人は、老いに似合わぬ眸をかっとさせて――「かくなるうえは、そこへ渡って、梁山泊一味へ仲間入りを申し入れようではないか」
「だが先生。はたして彼らの仲間が、快く容れるかどうか?」
「心配は無用。われわれの手には金銀がある。引出物としてその一部を献じてやれば」
「なるほど」
たちどころに、四人の腹は一致した。……かねて“黄泥岡の智恵取り”で奪い獲た金銀珠玉を五、六個の荷物にまとめ、手飼の壮丁十人ばかりにこれを護らせ、呉用と劉唐の二人が付いて、すぐ石碣村へ向って先発して行く。
あとに残った晁蓋と公孫勝は、大勢の家族雇人を一堂に呼び集めて、それとなく別辞を告げ、家財道具をことごとく分け与えて、これも一ト足あとから石碣村へ急ごうとしていたが、さて別れを惜しむ中には、多年愛していた女も