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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ご縁があったとは、一体なんのことだ」
「まア押司さん、お聞き下さいましよ。ゆうべポッキリと、閻の老爺が亡くなりましてね。……酒のみで、歌謡狂いといわれた道楽者じゃござんしたが、あれでも親娘三人ぐらしの稼ぎ人だったんでございますよ」
「ふム。……それは可哀そうに」
「まったく、気のいいおやじさんでございましたからねえ。それだけに押司さま、死んだあとは借金ばかり。……それでまアお葬式も出せないッて、私みたいなところへ泣きつきに来るような始末。ところがこの私も、病人やら物費やらで、このところ、どうしようもございません。……こんな往来中で、なんともかンともすみませんが、お慈悲と思し召して、この閻婆に、棺桶の一つでも、お恵みなすってやっちゃあ下さいますまいか」
「王婆、ほんとかね、それは」
「まア旦那、なんだって、お葬式をタネに嘘なんかいえましょう」
「じゃあ、これも仏への供養だ。わしの名刺を持って、葬式屋の陳三郎の店から、棺桶と華を貰って行くがいい」
「あれ、まあ。やっぱり宋押司さまは、噂にたがわぬお情け深いお方だった。さア閻婆さんよ。なにサ、おまえのためじゃないか。