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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
だんなだって、殿方じゃござんせぬか。ちっとはその、女ごころにもなって、なンとかしておやんなさいましなねえ。……おっと、あとのお料理が焦げつくかもしれない」
また外して、厨房に戻り、腰を叩いて、
「ああ、なんていう世話のやけるだんつくだろう」
と、呟いた。
それからまた、かなりな時間をおいてから、もう何とかなったじぶんと、抜き足差し足、上がって来てみた。しかし座景は変っていない。依然たる睨めッ子。……ただ婆惜の蘭瞼がほんのりと酒に染まり、宋江も酔って沈湎といるだけだった。いや夜も更けたし、宋江は帰るに家も遠く、進退きわまったともいえばいえる姿であった。
すると誰なのか、こんな深夜なのに、階下からとんとんとんと上がってくる跫音がして、
「押司さんは、ここにおいでですかい」
と扉を叩く者があった。
「なんだえ、まあこの人は?」
内から扉を開けて、男の前に立ちはだかった閻婆は頭ごなしに、がなりつけた。
「――だれかと思ったら、おまえは漬物屋の唐牛児じゃないの。人の家へ断りなしに入ってくるなンて、泥棒のするこったよ。なにサ馴々しそうに」
「泥棒とはひどい。なにも黙って入ってきたわけじゃあねえ。