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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
土地の者が怪しく見たのは当然で、
「旦那、旅のだんな……」
三人ほどが、追ッかけて来て、彼に訊ねた。
「もし、ゆうべは、どちらからおいでになりましたえ?」
「なに、どこからだと。知れたことよ、景陽岡を越えてきたのだ」
「へえ。虎に会いませんでしたか」
「虎か。虎はこの鉄拳で、撲り殺してきた」
「ご冗談を」
「冗談と笑うほどなら、なぜ訊くのだ。ばか野郎め」
また、行きずりの猟師二人が、彼にむかって同じことを問うた。武松の返事は同じだった。が猟師は、武松の袂の血を見て、半信半疑に峠の上へ馳けて行った。さあ大変、まもなく、虎の死体が四纏に絡められ、十数人の肩棒で、やッさもッさ麓へかつぎ降ろされてきた。
村では鐘を鳴らし、板木を叩き、一大事でもわき起ったような騒ぎである。女子供も出てくるし、鶏も羽バタキ、羊もさけび、豚も啼く。
「虎だ、虎だ、虎が退治されたとよ!」と呼び交わしつつ群れ集まって来る見物だった。たちまちそれは村道を人の山で埋めてしまう。
また、急を知って、土地の名主、年寄りも出て来るし、やや時をおいては、県役署の役人大勢が、馬を飛ばして馳けつけて来た。そして名主や猟師らを呼び集め、何事か訊問していたが、