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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
似ない弟に、また不似合な兄と嫂の事。 ならびに武松、宿替えすること
と、外から声をかけると、とんとんとんと二階から降りて来るらしい跫音がした。同時に、ぱらと白い女の腕が、内から芦簾をかかげて、
「あら……お帰んなさい。まあ、どちらのお客さま?」
と、愛相のよい笑みを外へこぼした。――そしてちらと、武松の姿へ流し眼をむけた金蓮の明眸といいその艶姿といい、はっと、男を蠱惑するかのような何かがある。
なるほど、これでは兄の武大が世間から妬かれたり騒がれたりして、故郷にいたたまれなくなったというのも無理はない。突嗟、武松でさえも変に眩いここちがした。
似ない弟に、また不似合な兄と嫂の事。
ならびに武松、宿替えすること
「さ、弟。二階へお上がり。狭いけれど誰に遠慮もない家だよ」
巡り会った弟を連れて帰ったよろこびで、武大はただもうころころしている。さっそく女房の潘金蓮へも鼻高々とひきあわせた。
「ねえ金蓮。……ほら、お前にもしょッちゅう噂をしていたろ、これがあの弟だよ、長いこと旅に出ていた弟の武二郎さ」
「ま。こちらが弟さんですの」
金蓮はそのしなやかな両の腕を柳の枝のように交叉して、初見の拝をしながら、濃い睫毛の翳でチラと武松の全姿を見るふうだった。